読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

きゅうえもんのおと

いろんなことを書くつもりです。






「忘れられない飲食店」

お題「忘れられない飲食店」

 

 

 

 

その店は、古い町並みの中にあった。

 

店の入り口は北向き。南側にも建物が建っていて、日当たりは良くなかった。

 

夜、その店の前を通ると、落ち着いたオレンジ色の明かりに温かさを感じた。

 

その店に入ったのは、二度だ。

 

一度は恋人と、一度は友人と。

 

その恋人とはもう別れた。

その店に行こうと誘ったとき、恋人は乗り気ではなかった。

店に行くと、恋人の知り合いがいた。恋人は、二人でいるところを知り合いに見られることを嫌っていた。その理由は話してもらえなかった。

 

その恋人は、そういう人だった。

 

自分がどう思っているか、はっきり言葉にしない人だった。

態度で、嫌がっているとか、面倒くさがっているとか、喜んでいるとかいうことを見せていた。

見て分かってそれでいいこともあった。しかし、理由が知りたいときに言葉にしてもらえないと、こちらの悩みは増える。

「なぜ」と考えることが増えていき、その恋人のことがよくわからなくなった。

 

なぜ?

なぜ?

なぜ?

 

わからなくなると、そばにいられなくなった。

 

恋人が恋人じゃないように感じられた。

 

 

その店で注文したのはオムライス。たまごがふわふわのオムライス。

恋人も同じものを食べた。

 

 

友人と訪れたときには、コーヒーを飲んだ。

そのとき、何か食べたような気がするのだが、今は思い出せない。

 

 

木の床、タイルの間仕切り。やわらかいソファー。落ち着いたオレンジ色の明かり。

ときどき、木の床の鳴る音。